[連載]フリーソフトによるデータ解析・マイニング 4回

Rでの関数オブジェクト

 

 


1.既存の関数オブジェクト

Rには、通常頻繁に使われているデータの操作や標準的な統計計算は、ほとんど関数オブジェクトとしてプログラミングされている。ここでは、関数オブジェクトを略して関数と呼ぶ。データの処理および解析はその関数を用いて行う。Rは、積木の種々の形状の木片を積み上げて色々の物の形をつくるのと同じく、一つひとつの関数をパーツとみなし、それを組み合わせることにより、複雑なデータの処理・解析を行うように設計されている。

 

2.基本統計量の関数

 統計量(statistic)とは、統計データから計算、要約した数量のことである。基本等計量とは、通常品広く使用されている合計、比率、平均、中央値、最頻値、分散、尖度、歪度、四分位数などを指す。

 

関数の組み合わせの方法について例を用いて説明する。

例えば、7つの異なるグループに次の質問についてアンケート調査を行い、表1のような結果が得られたとする。

 

質問:今の生活がむなしく感じられることがある。

1.よくある  2.ときどきある   3.あまりない     4.ない

 

1  質問の回答結果(合計2407)

クループ

回答1

回答2

回答3

回答4

A

101

120

70

35

B

153

162

88

46

C

89

135

78

24

D

26

49

42

17

E

36

70

30

16

F

167

216

144

71

G

125

143

89

65

 

表の中の回答1は、質問項目の1の回答を指す。表の中の数値は回答の人数である。このようなアンケート調査結果は一般的には、まず次に示すように第1列はグループの名前、第2列は回答番号としたデータセットを作成する。Excelで入力された場合は、CSV形式に保存し、Rに読み込むことができる。例えば、Rで作成されたデータオブジェクトの名前がlifeであるとする。そのデータ形式を次に示す。

 

 

> life

No.  グループ  回答番号

1        A      2

2        A      3

3        B      2

<後略>

 

このような調査データの分析は、通常次ページ表1のようなクロス表に集計し分析を行う。Rでは関数tableを次のように用いると簡単にクロス表を作成することができる。

 

>table(life[,1],life[,2])

 

読者の手元にはlifeの素データがないので表1のクロス表のデータを次のように入力し、用いることにする。

 

>life1<-matrix(0,7,4)

>life1[,1]<-c(101,153,89,26,36,167,125)

>life1[,2]<-c(120,162,135,49,70,216,143)

>life1[,3]<-c(70,88,78,42,30,144,89)

>life1[,4]<-c(35,46,24,17,16,71,65)

 

このようなデータについて分析を行うためには、各グループの回答人数の合計を求める必要がある。合計を求める関数はsumである。グループAは第1行なので、その合計は次のように求めることができる。

 

> sum(life1[1,])

[1] 326

 

同じの方法で、グループBCDEFGの合計を求めることができる。しかし、このような方法では7回のコマンドラインを実行することが必要となる。同じの作業を何十回、何百回行わなければならないのは非常に非効率である。Rには行、列の操作をまとめて行う関数applyがある。例えば、データlife1のグループ別の合計は次のコマンドで求めることができる。返された値はそれぞれグループABCDEFGの合計である。

 

> apply(life1,1,sum)

[1] 326 449 326 134 152 598 422

 

関数applyの引数は、まずデータ、その次は求める統計量が行単位であるか、列単位であるかの指定(行の場合は1、列の場合は2)、最後には求めたい統計量(例えば、平均、中央値、最大値、最小値、範囲、分散など)を指定する。

 

 

また、表1のようなデータにおいては、しばしば百分率データを用いて比較分析を行う。百分率は個々のデータをそのグループの合計で割り100を乗じた値である。life1の百分率は次のように求めることができる。

 

>(life1/apply(life1,1,sum))*100

 

このコマンドラインを実行すると小数点右数桁のデータが返される。小数点右の桁数が多いと精度はよいが、扱うのに不便である場合もある。問題によっては、小数を丸める(四捨五入)必要がある。小数を丸める関数としてroundがある。関数roundの書式を次に示す。

 

round(x,桁数)

 

式の中のxはデータ、あるいはデータオブジェクトである。表1の百分率のデータを小数点右2桁まで丸めるコマンドラインおよび返された結果を次に示す。

 

>round((life1/apply(life1,1,sum))*100,2)

      [,1]  [,2]  [,3]  [,4]

[1,] 30.98 36.81 21.47 10.74

[2,] 34.08 36.08 19.60 10.24

[3,] 27.30 41.41 23.93  7.36

[4,] 19.40 36.57 31.34 12.69

[5,] 23.68 46.05 19.74 10.53

[6,] 27.93 36.12 24.08 11.87

[7,] 29.62 33.89 21.09 15.40

 

このデータは例として用いるので次のようにlife2という名前で保存しておく。

 

>life2<-round((life1/apply(life1,1,sum))*100,2)

 

データlife2について、個々のデータとその列の平均値との差を求めることを考えてみよう。平均を求める関数はmeanである。回答1の個々のデータとその列の平均値との差は、

 

> life2[,1]-mean(life2[,1])

[1] 3.41 6.51 -0.27 -8.17 -3.89 0.36 2.05

 

となる。データセットlife2のすべての列に対するこのような計算は、次のコマンドで行うことができる。

 

>t(life2)-apply(life2,2,mean)

 

このように求めた結果は、第1行が回答1、第2行が回答2、第3行が回答3、第4行回答4となる。表1と同じのように列を回答1234にするためには出力結果を転置する必要がある.また、小数点以下2桁まで丸めると次のようになる。

 

 

 

> round(t(t(life2)-apply(life2,2,mean)),2)

      [,1]  [,2]  [,3]  [,4]

[1,]  3.41 -1.32 -1.57 -0.52

[2,]  6.51 -2.05 -3.44 -1.02

[3,] -0.27  3.28  0.89 -3.90

[4,] -8.17 -1.56  8.30  1.43

[5,] -3.89  7.92 -3.30 -0.73

[6,]  0.36 -2.01  1.04  0.61

[7,]  2.05 -4.24 -1.95  4.14

 

関数を組み合わせた場合、関数の実行の優先順位は丸括弧()を単位にコマンドの中心部から外側の方向に、階層的に中心部から計算結果を次の層にわたす。上記のコマンドの関数の実行順序を番号で次に示す。

 

round(t(t(life2)-apply(life2,2,mean)),2)

 

@            t(life2)

A            apply(life2,2,mean)

B            t(life2)-apply(life2,2,mean)

C            t(t(life2)-apply(life2,2,mean))

D            round(t(t(life2)-apply(life2,2,mean)),2)

 

2.自作の関数オブジェクト

 Rでデータ解析を行う際、すでに関数のオブジェクトがある場合はその関数を用いればよいが、千差万別なデータ処理および解析の方法をすべて関数として用意して置くことは不可能である。解析したい方法が関数として用意されていない場合は、前節の説明のように既存の関数を組み合わせてデータを処理・解析する。頻繁に同じの処理を行う場合は、既存関数を組み合わせた関数オブジェクトを作成しておくと便利である。Rでは、関数functionを用いて関数オブジェクトを作成する。

 

(1)functionの構造

関数functionによるプログラムの構文を次に示す。引数は複数項目でもかまわない。

 

関数の名前<-function(引数){

プログラムの本体

 

例えば、前章で求めた個々のデータとその列の平均との差を求める関数は次のように作成する。

 

>hensa<-function(x){

round(t(t(x)-apply(x,2,mean)),2)

}

 

この簡単なプログラムがhensaという自作の関数オブジェクトである。この関数の引数はxのみで、xはデータ行列、あるいはデータフレームである。返す結果は、個々のデータとその列の平均との差である。より複雑な関数(プログラム)を作成するためには、比較、繰り返しの処理などを行う必要がある。

 

 (2)比較・判断文

データを処理するときには、与えられた条件と比較し、判断を下さなければならないケースにしばしば遭遇する。Rでの比較・判断文の書式を次に示す。

 

 if(条件式) 処理1 else 処理2

 

この文をif文とも呼ぶ。if文の例として、データlife2の第1行第1列のデータが、その列の平均値より大きければTRUE(真)、そうでなければFALES(偽)を返すコマンドと実行結果を次に示す。

 

>if(life2[1,1]>mean(life2[,1])) print(TRUE)else print(FALSE)

[1] "TRUE"

 

(3)繰り返し文

 コンピュータに同じの作業を繰り返し実行させる指示文を繰り返し文という。R言語には3種類の繰り返し文forwhilerepeatがある。ここでは、for文のみについて説明する。for文は、変数を用いて繰り返しの回数をコントロールする。for文の書式を次に示す。

 

for(変数 in 変数の開始値:変数の終了値){

繰り返し処理される部分

 

前節のif文を説明する際の

 

if(life2[1,1]>mean(life2[,1])) print(TRUE)else print(FALSE)

 

は、11列のみについて比較・判断の処理を行った。1列の7行のデータについてこのような処理は、for文を次のように用いて行うことができる。

 

>for(i in 1:7){

if(life2[i,1]>mean(life2[,1])) print("TRUE")else print("FALSE")

}

 

 for文を次のようにもう一回使用するとデータセットにおける、個々のデータが その列の平均値より大きいとTRUE”、小さいと“FALSE”を返す処理ができる。

 

>for(j in 1:4)

for(i in 1:7){

if(life2[i,j]>mean(life2[,j])) print("TRUE")else print("FALSE")

}

 

ここでは、for文の説明のため二重のfor文を用いているが、これは非常に効率が悪いプログラムである。Rは、for文のような繰り返し文の処理効率がよくないため、データサイズが大きい場合は繰り返し文の重ねをなるべく避けるのが賢明である。

 

3.プログラムの入力と編集

Rでのプログラムの入力方法はいくつかある。

 

(1)直接Rのコンソールに入力

コンソール上で1行の入力が終わったら改行する。入力されたプログラムが終了していない場合は、自動的にコマンドラインの先頭に記号“+”が返される。記号“+”の右にプログラム文を続けて入力する。この方法は、入力途中にプログラムにエラーがあると、入力した部分はRに保存されないので、行数が多いプログラムには向いていない。

 

(2)テキストエディタを使用

メモ帳、秀丸、ワードなどのテキストエディタ上で、プログラムを作成し、そのプログラムをコピーし、Rのコンソールに貼り付ける。プログラムにエラーがあり、正常に作動しなかったら、テキストエディタ上で修正し、コピー、貼り付けの作業を繰り返す。

 

(3)関数fix、editを使用

関数fixを次のように用いると

 

>fix(program1)

 

1のようなテキストエディタが開かれる。コマンドラインの中のprogram1は自作関数の名前で、各自が自由に名前をつけることができる。

 

1 関数編集エディタ画面

 

2 のように開かれたテキストエディタの括弧()の中に引数、括弧{}の中にプログラム本文を入力する。入力が終ったら上書保存し、テキストエディタを終了すると、プログラムにエラーがない場合、関数オブジェクトが作成される。さらに編集を行う場合は、fix(program1)を実行するとテキストエディタが開かれる。

 

2 自作関数オブジェクトの編集画面

 

関数editを用いて関数オブジェクトを編集することも可能である。ただし、その際には、次のように付値を行わないと編集されたプログラムが保存されない。

 

>program1<-edit(program1)

 

作成した関数オブジェクトを実行するためには、開かれているテキストエディタを終了しなければならない。最後に、通常頻繁に使われる関数とその簡潔な説明と例を次ページ表2に示す。


2 頻繁に使う関数


 

関数名

説明と例

基本統計量

sum

合計、

mean

算術平均、

max

最大値

min

最小値

range

範囲(最大値−最小値)

median

中央値

var

分散

apply

行・列別の基本統計量を返す

table

個々のデータの出現頻度を返す。クロス表の作成

データ型とデータセットの操作

character

文字型

complex

複素数型

integer

整数型

logical

論理型

numerical

実数型

null

空データ型

vector

ベクトル型

data.frame

データフレーム型

matrix

行列型

array

配列型

list

リスト型

class

オブジェクトの属性を返す

is.*****

****はデータ型の関数名

is.matrix(x)は、xが行列の場合は”TRUE”、そうではない場合は”FALSE”を返す

as.****

as.matrix(x)は、データxを行列型に変換する

 

c

データオブジェクトの作成

t

データを転置

データのサイズ

nrow

列の数を返す

ncol

行の数を返す

length

データオブジェクトの長さを返す

dim

行列、配列のサイズを返す

 

関数名

説明と例

名前

names

データ項目に名前を付ける

colnames

列に名前を付ける

rownames

行に名前を付ける

初等代数

abs

絶対値

abs(-2)=

exp

自然指数

exp(1)=2.7182

sqrt

平方根

sort(4)=

log

自然対数

log(exp(1))=1

log10

常用対数

log10(10)=1

cos,sin,tan

三角関数

acos,asin,atan

逆三角関数

round

四捨五入

round(3.1415,3)= 3.142

並べ替え

sort

昇順に並べ替える

rev

逆の順に並べ替える

ran

ランクを返す

sort.list

order

昇順に整列された場合のデータの順番を返す

結合と編集

rbind

データを縦に結合

cbind

データを横に結合

edit

エディタを起動

fix

オブジェクトの編集

data.entry

表計算風のインタフェス

edit.data.frame

データオブジェクトを編集する

入出力

scan

ファイルを読み込む

read.table

データフレーム型として読み込む

write

ファイルを出力する

sink

画面に返される結果をファイルとして出力する

 

rm

rm(x)は、オブジェクトxをの削除する

 

ls

Ls()は、オブジェクトのリストを返す